暑い夏は、日中散歩をすることは殆どありません。
8月最後の日、急に涼しくなったので、部屋にこもっての仕事にすっかり飽きて
しまった私は、4時を回った頃に犬を連れて散歩に出ることにしました。
グレーの曇天の空の下では、街も木々の色も一様に彩度を落としています。
夕方の暗さとは違う落着いた景色は、気分を沈静させてくれます。
そして、コンピュータのモニターで画像の作業を長く続けたあとは、いつも木々の
複雑なディテールに心を打たれます。
川沿いの散歩道は欅と古い桜の巨木が天蓋を作っていて、この日は静かな気持ちの
まま、どこまでもどこまでも歩いて行きたくなりました。
さて、もう月が変わってしまいましたが、8月に出かけた場所を少し記しておきます。
●樹下美術館(上越市)
7月、出かけようと車に乗った直後に中越沖地震に遭遇し、訪問が延期になっていた
樹下美術館に、母と伯母と従姉妹と出かけました。
一年で最も美しい緑の水田を臨む風景の中に、6月にオープンしたばかりの美術館は
ありました。
館内に入ると、緩いカーブの壁面を持つ展示室には倉石隆氏の油彩画、その奥の四角く
間接光を取り込んだ端正な部屋には、齋藤三郎氏の陶磁器が展示されています。
カフェは階段を数段降りるので、テーブルの前に座るとすぐ眼の下に緑の芝生が
広がっています。この目線が低くなる経験は新鮮です。
手入れされた庭は緩やかに傾斜し、その先の畦道と水田に続いています。
コーヒーも紅茶もポットで出していただけるので、お茶がある間はゆっくりして
いられるようで嬉しくなります。
館長でもいらっしゃる医師のS先生にゆっくりお目にかかることができ、楽しい午後でした。
展示作品など詳細な様子は、下記からご覧になれます。
樹下美術館
http://www.juca.jp/

●越後妻有 大地の祭り(十日町市)
ほくほく線と呼ばれる北越急行の松代駅は、帰省の折いつも通りすぎるだけでしたが、
今回はじめて娘と途中下車してみました。
今年はトリエンナーレの年ではありませんが、『大地の祭り 2007夏』のイベントが
8/1〜9/2まで開催されていました。
展示・イベントエリアは十日町市と津南町にわたるとても広い地域ですが、私たちは
駅前の農舞台と周辺を歩きました。
写真は、ジョセップ・マリア・マルティン(スペイン)の作品。
駅から農舞台に続く回廊に、松代町全世帯の屋号がひとつひとつ書かれた彩色板が展示
されていました。
移動するとセンサーが反応して、スピーカーから(年配と思われる)地元の人が地元の
言葉で呼びかけてきます。
町を屋号で視覚化した色彩のボリュームと、姿がないのに突然耳に届けられる柔らかい
言葉は、地元出身の私にすらエキゾチックに感じられました。
彩色板の色は「我が家の色」とか「私が選んだ松代町の色」なのでしょうか。
知りたいと思いました。
越後妻有 大地の祭り
http://www.echigo-tsumari.jp/

●歓喜踊躍山 浄興寺(上越市)
高田で用事を済ませた後バスの出発まで時間があったので、炎天下、寺町まで少し足を
延ばしてみました。
浄興寺は、越後・国府に流罪となり7年を過ごした親鸞を開祖とし、さまざまな経緯を経た
のち1665年に現在の地に建立されたとされています。
写真は本廟で、柏崎の伽藍師の名匠、篠田宗吉が棟梁となって、18882年から6年を
費やして完成させたものだそうです。
花鳥、動物などの精巧な彫刻は風雪を経て木の肌を晒し、シャープなエッジはまわりの
空間をも見事に彫り出しているようでした。
浄興寺
http://www.johkohji.com/