先週、御茶ノ水のf分の1ギャラリーで、装丁家・桂川潤さんが手がけた古典四重奏団のCD『バルトーク弦楽四重奏曲』のアートワーク展が開催されていたので出かけてきました。
展示されていたのは、CDに使われた原画のほか、展覧会のために新たに制作されたものも含めて30数点がありました。
トレース(trace)という言葉をキーワードに、バルトークの写真から何枚もの素描が描き起こされていました。素描は銀筆(シルバーポイント)という画材が使われていて、私ははじめてこのような画材があることを知りましたが、鉛筆が発明される以前は普通にデッサンに使われていたそうです。
描かれたバルトークの肖像は、当時の人々の写真や風景写真、楽器、枯葉の葉脈などと何層にも重ねられ(本物の枯葉もテープで止められていた!)、深味のあるテクスチャーが作り出されていました。
またバルトークの作曲技法が黄金比を生み出すフィボナッチ数列を引用していることから、新たに制作されたアートワークには黄金比螺旋やオウム貝の美しい形もありました。
私が訪ねた土曜日の午後はミニコンサートがあり、桂川さんご本人のフルートとギタリストの方とのデュオで、バルトーク「子どものために」からの小さな曲も何曲も聴くことができました。

四谷にある石響というスペースで古典四重奏団のバルトークの弦楽四重奏曲を初めて聴いたのは、もう5年以上前になると思いますが、その時の驚きは今でも忘れることができません。古典四重奏団の方たちは、全ての曲を暗譜で演奏します。バルトークの透明で厳しい音楽を、その時全身で集中して聴きました。
その後もバルトークに魅せられましたが、ベートーヴェンの美しい後期弦楽四重奏曲もショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲の素晴らしさも、古典さんの圧倒的な演奏を通じて私は知りました。
桂川さんは、杉田徹さんの『フォルティシモな豚飼い』『ピアニシモな豚飼い』の装丁をされていることから、お名前と仕事はウェブページで知っていましたが、お目にかかるのは初めてでした。
古典四重奏団の古典倶楽部の会員でもいらっしゃるので、小さな試演会でいつかまたお目にかかることができるかもしれません。
f分の1ギャラリーは、10年前に私の
個展を企画していただいたギャラリーです。
ギャラリーオーナーのTさんにお会いすると、いつも話がはずんで長居をさせていただいてしまいます。
posted by norno at 00:49|
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